「NICHIAではたらく」を知るマガジン

2025.05.08
【異職種対談】車載照明イノベーションの鍵は「内製」にあり

MEMBER
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第二部門 先進商品開発本部 先進プロセス開発部
K.A.(2007年入社)
プロセス開発部に所属し、次世代製品に関わるプロセスの構築や新技術の開発を行う。
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第二部門 先進商品開発本部 先進商品開発部
A.K.(2012年入社)
商品開発部に所属し、μPLSの設計や製品化に向けたプロジェクトマネジメントを担当している。
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生産プロセス・品質部門 生産技術本部 生産技術第二部
K.T.(2005年入社)
生産技術部に所属し、建屋や周辺設備の管理・⾃動機の製作、品質管理を⾏う。自動機の製作を担当。
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第三部門 蛍光体開発センター 無機開発部
K.N.(2005年入社)
蛍光体開発センターに所属し、酸化物系、フッ化物系蛍光体の開発・改良・量産化技術開発を行う。
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第二部門 第二生産本部 第四製造部 製造技術第四課
T.M.(2014年入社)
μPLSの製造技術部に所属し、量産設備の立ち上げや、量産にて不具合が発生した際の原因の追求・対策を行う。
※所属は2025年2月28日時点
多様な専門性が交差するものつくり
皆さんはμPLS(micro Pixel Light Source)と呼ばれるLED光源の開発に携わっているとお聞きしました。それぞれの担当業務を教えていただけますか。
A.K.
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まずは、μPLSについて少し説明させてください。μPLSは「マイクロ・ピー・エル・エス」と読み、NICHIAとドイツのインフィニオンテクノロジーズ(以下、インフィニオン社)が共同開発した極小のLED光源のことです。NICHIAが自社開発したチップを使ったLED技術とインフィニオン社の内蔵LEDドライバICの技術を組み合わせることで、16,384個のマイクロLEDをすべて個別に駆動させることができます。自動車用LED照明技術として2020年から共同開発を始め、2023年に量産に成功しました。将来的には、ヘッドランプをより小さく、スリムにできる他、ピンポイントでのハイビーム照射などが可能になり、運転の快適さや安全性が高まります。この技術により、自動車メーカーの設計と製造の複雑さを大幅に軽減できることも、注目を集める理由の一つです。私はこのμPLSの商品開発部に所属しており、製品の設計や、開発スケジュールのマネジメントなどを行っています。
K.A.
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A.K.さんの部署で、製品の設計が決まると、私の所属するプロセス開発部に回ってきます。A.K.さんと相談しながら、その製品をどんな技術や装置を使って、どのように組み立てていくのかを決めていくことが私の役割です。
K.T.
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私は生産技術部に所属しており、量産のための装置を作っています。K.A.さんのいるプロセス開発部から「こういうスペックの装置が欲しい」と依頼が来るので、それに見合うように設計して組み立てていきます。装置はだいたい半年くらいで完成し、製造技術部にバトンタッチします。
T.M.
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そこからは、私のいる製造技術部で生産条件を決めていきます。生産条件とは、装置での処理時間や、使用する液体の濃度のことで、これらが少しでも違うと、製品の品質が変わってきます。装置で量産すると、どうしてもわずかなバラつきが出てくるので、振れ幅があったとしても定められた規格に収められるように設定していきます。その他、高い品質を保ちながら安定的に量産するための技術的な改善も担当しています。
K.N.
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私は、μPLS用の蛍光体の開発・製造を行っています。μPLSだけではなく、第三部門内に、事業企画部や蛍光体製造部があり、社内で必要なすべての蛍光体の製造を担っています。今回も、μPLS用の蛍光体の依頼があったため、それに合わせて開発・製造をしました。
K.T.
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生産技術部も同じで、μPLSだけではなく、NICHIAが製造するものに関わる装置を幅広く造っています。
1平方ミリメートルに400個の精度を究める
多様なプロフェッショナルが社内にいて、μPLSができているんですね。μPLSの製造の難しさはどこにあるのでしょうか。
K.A.
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μPLSは一つの基盤に16,384個のマイクロLEDを搭載するのですが、すべてのLEDを一括で搭載する技術の確立にはがかかりました。最初の実験では半分も搭載できておらず、少し傾けただけでパラパラと落ちてしまっていましたね。
T.M.
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おそらく、μPLSは、社内で最も精度を求められる製品になると思います。マイクロLEDは、一つが髪の毛の太さくらいのサイズなので、それを綺麗に整列させて基盤に載せるのは困難を極めました。量産までの道のりが長く、生産技術部と、装置の精度を高めるために何度も調整を重ねた記憶があります。
K.T.
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そうですね、要求された精度でマイクロLEDを配置して、かつ要求された装置のスペックをクリアできたときには達成感がありました。
K.N.
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蛍光体で言いますと、μPLSは他のLEDと比べても特殊で、今まで通りのLEDに使う蛍光体では思ったような性能を引き出すことができなかったので、製造工程や原料をすべて見直し、いちから新しい蛍光体を作り直しました。
A.K.
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μPLSはインフィニオン社と共同開発しているため、1つの試作を作るにも、材料の調達などでかなりの時間を要します。例えば、一般的なLEDを試作するには2週間あれば十分ですが、μPLSの試作には1年ほどを要します。いつも以上に、綿密な計画性が求められますね。また、海外の企業文化への適応や、英語でのコミュニケーションにも努力を要しました。
内製できる技術力が、イノベーションを加速させる
このような開発をすることは容易ではないと思います。それを可能にした、NICHIAの強みはどんなところにあると思いますか?
T.M.
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もし、他社がμPLSを製造しようとすると、LEDチップを購入する必要がありますが、NICHIAがLEDチップを他社から購入するとなれば、それをどのように使うのかはっきり言えないんです。そこをぼかしながらの発注になると、希望通りのLEDチップを手に入れることは難しいでしょうね。希望通りのLEDチップを内製できることは、他社にはない強みだと思います。
A.K.
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同じく、装置を内製できるのも強みでしょうね。もちろん、装置のメーカーさんにお願いすることもありますが、「この目的で」というのは言いづらいところも多いので。
T.M.
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そうですよね。K.T.さんの部署にはいろんな製品の情報が集まっているのではないでしょうか?
K.T.
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確かにそうですね。いろんな装置を作っているからこそ、一つの製品で蓄積された知見が、別の製品でも活かされることも多々あります。
K.A.
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諏訪と横浜に研究開発拠点があって、よくお世話になっています。「この構造でLEDはどのように光るのか?」など、シミュレーションをしてもらうことが多いです。せっかく作ったのに暗くて使えないこともよくあるので、事前にシュミレーションできるのはとても助かりますね。
一人ひとりの個性が、全体の強みになる
最後に、皆さんが仕事で大切だと思うことを教えてください。
T.M.
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コミュニケーションです。僕は大学院を卒業して、NICHIAに就職しましたが、仕事でそのときの知識をフルに使っているかと言われたらそんなことはありません。やっぱり、社内でのコミュニケーションで得た情報の方が、格段に仕事に活きていると思います。
K.T.
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仕事の中に、自分がやってみたいことを取り入れることですね。他の人がまだ使っていないメーカーのものを使ってみるなど、自分が興味のあることを仕事で実現できるとモチベーションも上がります。
A.K.
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K.T.さんの意見に共感します。少し言い換えるなら、自分の独自性を出す、ということになりますでしょうか。入社してすぐのころ先輩に、「言われた通りにやるのは当たり前。そこにプラスして、自分がやる意味を出しなさい」と言われたことがとても印象に残っています。そうすることで製品への愛着も増していくはずです。
K.N.
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主体性を持って、こだわることが大事だと思います。人に言われてやることってすぐに忘れちゃうんですけど、自分がこだわりを持ってやり切ったことって、10年経っても20年経っても覚えているもの。それと同じくらい大切なのは、過去の成功にとらわれずに、常に変わっていくことです。
K.A.
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チャレンジ精神ですかね。特に開発の部署は、新しいことに果敢に挑戦する姿勢が求められます。例え失敗しても、挑戦そのものが評価される文化の企業なので、恐れずに挑戦してほしいなと思います。